【書評】タイトルに偽りあり!『決定版「ハラル」ビジネス入門』アクマル・アブ・ハッサン

私は現在、タイの首都バンコクで生活しています。

タイと言えば、敬虔な仏教徒の国であるというイメージが強いかと思いますが、イスラム教国であるマレーシアと接するタイ南部や、各地からの人口流入があるバンコクでは、玉葱のような形の屋根をしたイスラム寺院「モスク」が点在しており、イスラム教徒(ムスリム/ムスリマ)のタイ人も数多く住んでいます。

イスラム教徒は、礼拝などの都合上、モスクの周辺にコミュニティを形成します。こうしたイスラム教徒の居住エリアにある飲食店などの店先には、イスラム教徒向けの「ハラル」認証マークが掲示されているのを目にします。

とはいえ、イスラム教徒が、豚肉やアルコールを口にしないという最も基礎的な知識だけで、それ以上のことを何も知らないので、少しくらい知っておくと何かの役に立つかもしれないと思って、この本を読んでみました。

決定版「ハラル」ビジネス入門

この本は、マレーシア人のアクマル・アブ・ハッサンさんと、日本人の恵島良太郎さんの共著で、それぞれ第一部と第二部を担当して書かれています。最後には、お二人の対談もありますが、全体の構成としては二部制で個別に書かれているようです。

前半のハッサンさんが書かれた部分は「ハラル」ビジネス入門というタイトル通りの内容ですが、後半の恵島さんが担当された部分は、あくまでマレーシア進出物語です。全体のほぼ50%が、タイトルから連想する内容は乖離しています。

以下、本書の目次と、各章ごとに読みながら感じたことなどを書きます。

ハラルビジネスの現在

ハラル対応後進国ニッポン

日本のインバウンド政策の目標達成には、インドネシアやマレーシアなどのイスラム教国からの観光客の受け入れが不可欠であるものの、韓国や中国などと比べても、日本のハラル対応は随分と遅れているそうです。この書籍自体が2014年9月発行ですので、少しは改善したのかもしれませんが、おそらく依然として日本がハラル対応後進国だと思われます。

第一部「ハラルビジネスの現在」の著者は、群馬大学に留学後、本国の投資関連省庁に勤務した経歴を持つマレーシア人のアクマル・アブ・ハッサンさんです。現在は日本にて、MHC(マレーシア・ハラル・コーポレーション)という会社を創業し、イスラム教徒の観光客を日本へ迎え入れるためのインバンドと、日本の製品にハラル対応を行って輸出するアウトバウンドの両面のコンサルティングを行っているそうです。

ウェブサイトもありました → マレーシア・ハラル・コーポレーション

念のため、本書を読み進めるに当たっては、コンサルティング業者による勧誘本であることを警戒する必要がありますね。

イスラム教とハラル

この章は、イスラム教に関する概要の説明です。

ムハンマドが神からの啓示を受けて、開かれたのがイスラム教で、1日に5回、礼拝をする必要がある。といったような一般的なイスラム教に関する解説が書かれています。

ちなみに、「ハラル」の反対語は「ハラム」で、イスラム教徒が行ってはいけない行為に該当するような事物のことを指すそうです。

22億人のイスラム市場

イスラム教と言えば、やはり最初に思い浮かべるのはイランやイラクなどの中東地域ですが、東南アジアにはマレーシアやインドネシアというイスラム教徒が中心の国があり、また、タイなどのように主たる宗教は異なるものの、イスラム教徒も数多く住んでいる国があり、全世界で22億人が生活しているそうです。

キリスト教は、スペインやポルトガル、オランダ、イギリスなどが積極的に世界に広めた歴史を知っていますし、仏教がインドから中国を経由して日本へと伝来した歴史も知ってますが、イスラム教ってどのように広まったんですかね。この本には、解説がありませんので、また何かの機会に調べてみたいと思います。

イスラム市場への進出

本章では、イスラム教徒を対象として「ビジネスとしてのハラル」に取り組みたい企業向けの方法を解説しています。

まず、観光目的で来日したイスラム教徒向けのインバウンド施策として、飲食店などでハラルに適合したサービスを提供する方法として、「ローカルルール」という考え方が示されています。日本のような非イスラム教国では、厳格なハラル基準を満たすことを目標とせず、可能な限りの最低限度の条件をクリアすることによって、イスラム教徒のお客を迎え入れることが出来るようにするというようなものです。もちろん、その最低限度の条件さえ、決して容易ではありませんが、具体的な認証取得手順が示されています。

また、日本の製品をイスラム教徒向けに輸出したり、イスラム教国に進出して製造や営業をおこなうアウトバンド施策としては、マレーシアを活用する方法があるようです。マレーシアでは、イスラム教国と非イスラム教国を結ぶ「ハラルハブ」としての役割を担うべく、国策としてのハラル対応を行っています。こちらも、具体的な手順や、既に進出済みの企業に関する例などが示されています。

オールジャパンでハラル対応

日本人にとってハラル認証とは敷居の高いもののように思ってしまいますが、日本国内を流通している食肉などは生産者から輸送、屠殺、卸、小売りまでの過程が把握できる「トレーサビリティ」に優れており、かつJIS規格などの国内基準を応用することによってハラル認証の取得も比較的容易になるなど、他国よりも優れていることが多くあるそうです。

とはいえ、なんでもかんでもハラルを取得すればビジネスが成功するというわけではないので、日本の政府や企業が一丸となって、ノウハウを蓄積しながら、イスラム教徒向けのビジネスに取り組んでいく必要がありそうです。

マレーシアへのビジネス進出

なぜマレーシア進出なのか?

第二部「マレーシアへのビジネス進出」は、日本のウェブコンサルティング会社で、マレーシアでレンタルオフィスや飲食店を運営するROI社の代表である恵島良太郎に、バトンタッチします。

・・・と言いつつ、どうやら上手くバトンが受け渡されなかったようで、この章では、恵島さんの過去の経歴や、マレーシア移住時の生活環境や、子息の教育機関のことなど、「ハラル」ビジネス入門というタイトルとは思えないマレーシア進出秘話のような内容が、ダラダラと書き連ねられています。

いや、マレーシア進出物語であれば、他に良質な書籍がありますので・・・・

会社設立とサービスオフィス立ち上げ

この章こそは、「ハラル」ビジネスかと思ったら、ROI社が最初に手掛けたレンタルオフィス事業に関する創業物語でした。マレーシアの首都クアラルンプールの街の概略や、家賃相場、マレーシアへ進出を希望する企業に関する調査活動などについて、相変わらずダラダラと書き連ねられています。

以下、あと何章か残っていますが、「ハラル」に話は戻らずに終わりますので、ここで読了です。

 

 

どうして、こんな中途半端な書籍になってしまっているんだろうか・・・(残念)

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きゃっぷキャプロア運営者

投稿者プロフィール

タイ在住ブロガー。ここ最近は、ブログ「キャプロア」の復活作業に邁進中です。あと、夜の連続ブログ小説「この男、猥褻につき」ってのを書いてます。旧ブログは「キャプローグ」、旧旧ブログは「キャプログ」です。ブログで賞を貰ったことがあります。

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